研究概要 |
22年度の主な研究成果としては、LHC-ALICE実験にて陽子陽子衝突実験のデータを用いたALICE-TPC検出器のキャリブレーションと、初の2.76TeVエネルギーでの鉛鉛衝突実験のデータ取得成功である。 22年度の秋に1カ月ほど鉛鉛衝突実験をおこなった。それまでの半年間で、21年度に取得されていた陽子陽子衝突実験のデータと、TPC検出器のキャリブレーションのためのレーザーを用いたデータを使い、とくにExBキャリブレーションのためのフレームワーク構築とその適用を行った。このキャリブレーションはALICE-TPC検出器という過去最大の大きさのTPCにおいてはじめて非常に重要となってくる。そのため、先駆的なキャリブレーションであるといえる。 また、鉛鉛衝突実験以降は、グリッドコンピューティングシステムを用いてそのデータを使い物理解析をはじめた。まずはじめに、物理解析に使えるデータセットの選定を行い、各検出器の性能を確かめた。22年度のデータの統計はあまり大きくないため、統計が小さくても物理的な結果の出せる、荷電粒子の方位角分布の測定をテーマにすえた。とくに、重イオン原子核の周辺衝突では荷電粒子の方位角分布は非等方的であり、その非等方性(v2,v3,v4)をはかることで、重イオン衝突初期に生成される物質の物性を研究することができる。
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