研究課題/領域番号 |
10J08507
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩川 弘宙 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | RNAサイレンシング / 翻訳抑制 / 植物 / 試験管内翻訳系 / miRNA / siRNA |
研究概要 |
RNAサイレンシングは、多くの真核生物に共通して存在し、20数塩基のsmall RNAを介した塩基配列特異的なRNA切断、翻訳抑制、あるいは転写抑制による遺伝子発現制御機構として機能する。動物では翻訳抑制及びmRNAの不安定化によって遺伝が制御されているが、植物では切断による制御が一般的であると言われていた。しかし最近になって植物でもsmall RNAを介した翻訳抑制が広く行われていることが明らかとなり、注目を集めている。 本研究は、脱液胞化技術を用いて作成された、高い翻訳効率を持ち、生体内の翻訳機構を忠実に再現できる植物培養細胞由来の試験管内系を用いて、植物特有のRNAサイレンシング機構、特に小分子RNAを介した翻訳抑制機構の分子機序を、生化学的手法によって明らかとすることを目的としている。 平成23年度は、平成22年度に作成したタバコを用いた試験管内翻訳抑制系に続き、モデル植物であるシロイヌナズナの試験管内翻訳抑制系の作成に成功した。これら2つの系を用いた結果から、植物における翻訳抑制は動物と異なり、poly(A)鎖の分解を伴わないことが示された。次に、翻訳抑制機構の詳細を解析した。ショ糖密度勾配遠心やケミカルクロスリンク法などの生化学的手法を用いて実験を行った結果、植物のRNAサイレンシング複合体はmRNAの5'cap近傍と相互作用しリボゾームのリクルートを阻害することが示唆された。 本研究をさらに進めることによって動植物にまたがるsmall RNAを介した翻訳抑制機構の包括的な議論が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書に記載した内容に沿った形で、しかも申請時の計画よりはやいペースで研究が進展しているとともに、翻訳抑制機構だけでなく、植物のRNAサイレンシング複合体形成機構の解析も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの方針で進めていけば申請書通りの内容で論文として発表できる。研究計画の本筋に変更は無いが、翻訳抑制だけでなく、植物のRNAサイレンシング複合体の形成機構の解析も同時に進めてゆく。
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