研究概要 |
今年度は抗てんかん薬ゾニサミド(ZNS)免疫抑制剤シクロスポリン(CsA)および心不全薬のカルベジロール(CV)の代謝経路がCYP3Aであることを明らかにした。また、3つのCYP3Aで主に代謝される薬物の体内動態を調査し、CYP3A活性の異なるイヌを収集した。これらのメカニズムはCYP3A活性の1塩基置換(SNPs)もしくはコピー数多型によるものである事を仮定し、今後の検討を進めていく。 【1】ZNS,CsAおよびCVが代謝される時の代謝に関わるCYP分子種の同定 イヌ肝ミクロソームを用いて、ZNS、CsAおよびCVが代謝される時に関わるCYP分子種を同定した。ZNSおよびCsAの主代謝経路はCYP3A12であることを明らかにした。CVの代謝経路の60%がCYP3Aによって代謝されたが、残りの40%の代謝経路は明らかにできなかった。 【2】ZNS,CsAおよびCVを用いた異なるCYP3A活性をもつイヌの探索 ZNS, CsAおよびCVをビーグル8頭に単回経口投与し、それぞれの薬物の血中濃度が低い個体をEM (enrich metabolizer)高い個体をPM (poor metabolizer)として群分けを行った。ZNSおよびCsAの薬物動態においてEMおよびPMと判定された個体は両薬物で同一であった。しかし、CVでEMおよびPMと判定した個体はZNSおよびCsAで判定した時のものと一部で一致しなかった。そのため、CVで判定した個体と、ZNSおよびCsAで判定した個体で一致しないものは除外する事にした。 以上の結果からCYP3A活性が異なるイヌをEMおよびPMと選別した。今後はこれらCYP3A活性が異なるイヌの遺伝子を採取し、それらのゲノムからエクソン領域のみをシークエンスし、CYP3A活性に関わる一塩基置換を調査する。
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