研究概要 |
フェルミガンマ線宇宙望遠鏡を用いた過年度の研究の結果を出版した。この研究では、地球近傍の典型的な巨大分子雲であるオリオン分子雲と銀河宇宙線の衝突によって発生するガンマ線を観測し、太陽系外の特定の場所での宇宙線のスペクトルの情報を引き出し、スペクトル形状が地球で観測されたものと無矛盾であることを示した。また一酸化炭素電波輝線による観測でこれまでに見積もられてきた分子雲の柱密度は、ガンマ線強度と必ずしも比例関係にないことを明らかにした。 ガンマ線観測の将来計画CTAに参加し、焦点面カメラおよび光学系の開発を行った。焦点面カメラの開発ではカメラの基本性能の測定や較正、制御ソフトウェアの開発を担当し、1,000から10,000チャンネルの読み出しが可能な地上ガンマ線望遠鏡用のカメラの実現可能性を示した。カメラの初期プロトタイプを用いたこれらの結果を論文として出版した。また初期型以降に開発された複数の試作機を用いた試験も継続的に行った。 光学系の開発では、CTAで使用される複数の望遠鏡の光学シミュレーションを行い、望遠鏡の設計やモンテカルロシミュレーションの開発を共同研究者とともに担当した。また焦点面カメラとともに使用される集光装置形状を新たに発明し、論文として出版した。新しく発案した集光装置を用いることで、従来の地上ガンマ線望遠鏡に比べて大気チェレンコフ光の収集効率を3%程度高めることが可能になり、また同時に地表などからの迷光を20%程度低減することが可能になるため、ガンマ線検出感度の向上に繋がると期待される。
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