研究概要 |
本研究では,我々が提案しているセミクローズド・システムによる単一細胞解析システムの構築を最終目的としている.今年度前半は,感熱応答性ポリマーを用いてマイクロスケールの物体を把持・移動できるThermoresposinve Gelprobe(GeT probe)について,その性能評価を行った.このプローブデバイスを用いることで,マイクロスケールにおいて影響力が大きくなる表面力を低減でき,把持物体のプローブへの付着を防止できる.感熱ゲルによる微小物体の固定力についてまず評価を行った,評価手法としてAFMカンチレバーを用い,マイクロスケールの物体でμNオーダーの固定力があることが分かった.これはレーザートラップで出力できるによる力(pNオーダー)よりも大きく,卵細胞等の大きな対象物も把持可能であることが示された.さらに,純水中でのマイクロビーズの把持及び移動を実現し,純水や培養液等ポリマー溶液を含まない環境でもGeT probeが使用可能であることを示した. 今年度後半は米国カリフォルニア州のUniversity of California,Los AngelesのProf.Chih-Ming Hoの研究室においてOptoelectronicReconfigurableMicrochannel(OERM)に関する研究を行った.OERMは光のパターンを用いて凍らせた動作媒体(溶液)中にマイクロチャネルを作製するデバイスであり,ダイナミックにマイクロチャネルのパターンを変化できる.本研究ではOERMを用いた細胞解析プラットフォームの開発を行っており,ペルチェ素子による温度制御や動作媒体の体積変化を用いた溶液のポンピングに関して研究を行っている. これらの研究成果は,国際会議2011 IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA2011)及び2011 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(IROS2011),国内学会Robomec2011において発表し,研究成果の公表に努めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的であるセミクローズド・システムによる単一細胞解析システムの構築の重要なデバイスの1つであるプローブデバイスについて,その性能を評価し,従来のデバイスにはない利点を示すことができた.また,新たなテクノロジーである再構成可能なマイクロチャネルを用いた流体デバイスの開発をUCLAにおいて推進することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,再構成可能な流体デバイスについて,デバイスの詳細な評価を行うことで現在100μm程度であるマイクロチャネル解像度の向上を目指す.また,動作媒体の体積変化を利用したポンピングシステムの開発及び評価を行うことで,外部からのポンプシステムを必要としないデバイスを実現し,本デバイスの実用性の向上を目指す.さらに,これまでに開発してきたセミクローズド・マイクロチップ,GeT probe等のプローブデバイス,及び再構成可能なマイクロ流体デバイスを統合することで,本研究の最終目的であるセミクローズド・システムによる単一細胞解析システムの構築を行い,細胞解析や薬剤の性能評価等の応用を目指す.
|