研究課題
平成22年度は、提案した陽子線線量分布計算アルゴリズムの骨格部分の構築を行った。我々が提案したSR-PBA(Spatial Re-sampling Pencil Beam Algorithm)は従来のペンシルビームをさらに細かく分け、それによって生じたサブビームによって計算を行う。サブビームの数は計算グリッドサイズ、そして照射機器のジオメトリに依存する。研究計画時に想定していたように、従来法のPBA(Pencil Beam Algorithm)法と比較して、ビームの分割によって非常に多くの計算時間を要した。これに対して、ビームの標本化を行う平面において、発生したサブビームを残余飛程(サブビームが進む距離)毎に束ねることによってSR-PBA法の高速化を図った。開発したアルゴリズムの検証は、実測によって得られた陽子線線量分布と計算によって得られた線量分布を比較することによって行った。実測では、不均質スラブファントムに陽子線を照射した。この結果、不均質スラブが体表付近に存在する場合、SR-PBAによる計算結果は実測の線量分布プロファイルに現れる特異的な線量低下や増加を再現することができた。不均質スラブがブラッグピーク付近に位置する場合、上記の線量低下や増加を再現する精度が低下することがわかった。上半期までの結果は9月に行われた第100回医学物理学会学術大会で発表し、日本医学物理学会第100回記念ポスター賞を受賞した。また更なる高精度化のために、体内で広がったサブビームをさらに体内で標本化するためにアルゴリズムを改良した。同様の検証実験を行ったところ、不均質スラブがブラッグピーク近傍にある場合においても、不均質媒体近傍深さでサブビームの再標本化を行った場合、線量分布プロファイル中の特異的な線量増加や低下を再現することができた。このことから開発したSR-PBA法は従来のPBA法と比較して人体の不均質近傍での計算精度を向上させることができる可能性がある。
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Medical Physics
巻: 37 ページ: 5376-5381