研究課題/領域番号 |
10J08704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江頭 祐亮 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 医学物理 / 高精度放射線治療 / 粒子線治療 / 陽子線治療 / 治療計画 / 線量分布計算アルゴリズム / ペンシルビーム法 |
研究概要 |
平成23年度は、提案した陽子線線量分布計算アルゴリズムの更なる高精度化を行った。我々が提案したSRPBA(Spatial Re-sampling Pencil Beam Algorithm)は従来のペンシルビームをさらに細かく分け、それによって生じたサプビームによって計算を行う。サブビームの数は計算グリッドサイズ、そして照射機器のジオメトリに依存する。サブビームのサイズは従来のペンシルビームのそれと比べて小さいため、ペンシルビームが考慮できない人体の密度情報を参照することによって計算精度が向上する。研究計画時に想定していたように、従来法のPBA(Pencil Beam Algorithm)法と比較して、ビームの分割によって非常に多くの計算時間を要した。これに対して、ビームの標本化を行う平面において、発生したサブビームを残余飛程(サブビームが進む距離)毎に束ねることによってSRPBA法の高速化を図った。しかしながら、当初提案したSRPBA法はこの標本化を行う平面を最大で2平面のみしか選択することができないため、これが高精度化を妨げていた。この問題点を解決するために,新しく提案したSRPBA法では,任意の平面でビームを分割することを可能とした。 開発したアルゴリズムの検証は、実測によって得られた陽子線線量分布と計算によって得られた線量分布を比較することによって行った。実測では、ポリエチレンの板を組み合わせた不均質スラブファントムを作成し、このファントムに陽子線を照射した。この結果、不均質スラブが体表付近に存在する場合、SRPBAによる計算結果は実測の線量分布プロファイルに現れる特異的な線量低下や増加を再現することができた。しかしながら、SRPBAによって発生したサブビームのサイズは深部方向に進むに従って大きくなることから、不均質スラブがブラッグピーク付近に位置する場合、上記の線量低下や増加を再現する精度が低下することがわかった。改良を行ったSRPBAでは,分割する複数の平面を任意で選択できることから,側方に広がった陽子線の側方不均質に対する散乱を考慮して、計算を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,2年目にアルゴリズムの高精度化とその検証を行うことができた。平成24年後より複雑な体系での精度検証と臨床画像を用いたレトロスペクティブ研究をしており、本年度までに開発したアルゴリズムを適用予定である。以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
高精度化されたSRPBA法のより複雑な体系での計算制度を評価するためのシミュレーション体系,実験体系を計画中である。さらに、米国MD Anderson Cancer Centerとの共同で,市販治療計画装置との線量分布計算精度検証比較を予定している。最終年度となる24年度では,更なる検証の上、国立がん研究センター東病院で用いられている陽子線治療計画装置のdose engineとして実装予定であり、それを用いたレトロスペクティブ研究を予定している。
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