研究概要 |
本研究では「新規金属置換ポリオキソメタレートによる環境調和型触媒反応系の開発」をテーマとして研究を行っている。 γ-Keggin二欠損型ポリオキソメタレートのテトラアルキルアンモニウム塩に-当量の酢酸パラジウムを反応させることで新規パラジウム置換ポリオキソメタレート、[(H_2SiW_<10>O_<36>)_2Pd_2]^<8->、の合成に成功した。また二当量の酢酸パラジウムを反応させることで新規パラジウム二置換ポリオキソメタレート、[H_2SiW_<10>O_<36>Pd_2(OAc)_2]^<4->(I)、の合成に成功した。キャラクタリゼーションはIR、NMR、CSI-MS、元素分析、単結晶x線構造解析により行った。これらはγ-Keggin二欠損型ポリオキソメタレートの欠損部位にパラジウムを導入した初めての報告例である。Iの合成溶液中にマロン酸を添加すると、[{H_2SiW_<10>O_<36>Pd_2(OCO)_2(CH_2)}_2]^<8->、で表される無機-有機-無機複合体が形成されることを明らかとした。マロン酸よりも炭素鎖数が多いジカルボン酸を添加することで有機部位が伸長した[{H_2SiW_<10>O_<36>Pd_2(OCO)_2(CH_2)_n}_2]^<8->(n=3,5,7)を合成でき、複合体の有機部位の長さを調節可能であった。Iは酸素を酸化剤とした1-トリメチルシリルオキシシクロヘキセンの三枝反応に触媒活性を示すことを明らかとした。Iと種々のジカルボン酸とを有機溶媒中で反応させることによっても複合体、[{H_2SiW_<10>O_<36>Pd_2(OCO)_2(CH_2)_n}_2]^<8->(n=1,3,5,7)、が得られたことから、Pdに配位したアセテート配位子は配位子交換能を有し、IがPd二核サイトを活性点とした触媒反応に活性を示す可能性が示唆された。
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