平成22年度において、研究代表者が修士課程で開発した偏波レーダーを用いた降水粒子判別法の精度向上を図るため、過去に名古屋大学のXバンド偏波レーダーにより観測された降水について降水粒子判別を行い、判別結果の検証を行った。 偏波レーダーを用いた降水粒子判別法では、特に固体降水粒子(雪片、氷晶、霰)の判別について、判別結果が検証された研究はこれまでほとんどなく、判別結果を地上もしくはゾンデの降水粒子の種類観測結果を用いて検証することが必要である。本年度は名古屋と金沢において地上で雪片、霰が観測された過去の事例について、偏波レーダーを用いた降水粒子判別の結果を、地上における降水粒子の種類観測結果と比較・検証し、降水粒子判別法が雪片と霰の識別に有効であることが確認された。また、北海道足寄郡陸別町において行われた偏波レーダーとゾンデによる同時観測結果を比較し、降水雲中の氷晶や過冷却水滴の判別を試みた。今後さらなる検証が必要ではあるが、氷晶と過冷却水滴の判別に成功し、今後の降水粒子判別法のさらなる改良の基礎となる結果が得られた。 また、落雷の極性・頻度は雷雲内における霰・氷晶の存在の指標であり、降水粒子判別の検証をする上で重要である。そのため、中部電力の落雷位置標定システムにより観測された落雷の極性・頻度の時間変化と、偏波レーダーの観測データから判別された降水粒子分布の時間変化を比較し、降水粒子判別法の有効性を検証した。その結果、雷雲中において降水粒子判別により霰と判別された領域の体積の増加と負極性落雷の頻度の間に相関が見られ、降水粒子判別法が妥当であることが確認された。 以上の成果により、今後雷雲の発達機構の解明を進める上で基礎となる降水粒子判別法が確立しつつあり、次年度以降は降水粒子判別法を完成させ、雷雲の発達機構の解明に当たる計画である。
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