研究課題/領域番号 |
10J08853
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
纐纈 丈晴 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 偏波レーダー / 降水粒子判別 / レーダー気象学 |
研究概要 |
平成23年度においては、雷雲の発達機構と降水粒子の分布、その時間変化の関連性を調べるために偏波レーダーを用いた降水粒子判別法を改良・検証し、実際に雷雲に適用して妥当性を調べた。 降水粒子判別法の改良・検証について、偏波レーダーによる降水粒子判別の結果と、同じ場所でゾンデ等により観測された降水粒子の種類とを比較することが有効である。本年度は、名古屋大学のXバンド偏波レーダーと雲粒子ゾンデによる降水粒子の同時観測データを用いて解析を行った。その結果、雪片と氷晶についてXバンド偏波レーダーを用いた降水粒子判別結果と雲粒子ゾンデによる観測で得られた降水粒子の種類がよく一致した。この結果については日本気象学会2011年度秋季大会で発表し、同2012年度春季大会についても発表予稿を提出し、発表が確定している。今後検証データのサンプル数を増やす必要はあるものの、固体降水粒子(雪片・氷晶)の観測に適したXバンド偏波レーダーによる降水粒子判別が有効なことが確認され、現在降水粒子判別法について投稿論文にまとめている。 この降水粒子判別法を夏季の雷雲に対して適用し、雷雲内部の降水粒子の鉛直分布とその時間変化を妥当に判別できるかどうかを調べた。その結果、負極性落雷が観測された時刻において-10℃高度付近に霰が判別され、この高度で霰と識別された領域の体積と負極性落雷の頻度には相関があった。この結果は先行研究で言われている霰の分布と落雷極性の関係を支持するものであり、降水粒子判別法は夏季の雷雲に対しても有効であることが確認された。この結果について日本気象学会2011年度春季大会とアメリカレーダー学会で発表し、レーダー学会後にはコロラド州立大学のChandrasekar教授を訪問して降水粒子判別法について議論を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の分割執行の影響により、降水粒子判別法の議論・情報収集のためのアメリカ・コロラド州立大学訪問期間が予定よりも短くなったが、文献調査により補った。また、同大学教授との議論で降水粒子判別法に対する一定の評価や助言が得られた。降水粒子判別法の開発は仕上げの段階に入っており、投稿論文にまとめる作業が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに改良してきた降水粒子判別法について、雲粒子ゾンデ観測による検証結果を国際学会で発表する。雲粒子ゾンデでは落雷の発生に重要であるあられについては観測が困難であり、また雲粒子ゾンデ自体の観測数が限られるため、気象官署における地上降水(雨・みぞれ・雪・あられ)の観測データにより降水粒子判別法の追加的な検証を行う。その結果完成した降水粒子判別法を投稿論文として発表する。次に、最盛期における発達度合いや落雷の極性・頻度によって雷雲をタイプ分けし、降水粒子判別法を用いて雷雲内部の降水粒子分布と雷雲の発達との関連性を調べる。その結果を投稿論文として発表し、さらにこれまでの研究を博士論文としてまとめる。
|