本年度は、終末期にある大質量星数天体を観測し、これらの天体のデータ解析を通して本研究の目的であるダスト形成量推定の手法の開発を行った。 2010年5~6月および9~10月の2回にわたりチリへ渡航し、東京大学アタカマ天文台のminiTAO/MAX38を利用して終未期の大質量星4天体の観測を行った。観測波長は12・18・31・37ミクロンのうち3~4波長である。このうち31・37ミクロンは地上観測装置ではminiTAO/MAX38が2009年に初めて観測に成功した波長領域であり、データ解析手法も未確立の状態であった。これらの波長帯では、通常の中間赤外線(5~26ミクロン)と同じ観測手法では大気放射に起因する画像上の模様が残り、天体検出感度が低下するという問題が生じることが分かった。これを解決するために、画像を加算する際に重み付けを行って画像の模様を取り除くためのプログラムを開発した。この新しい手法によって、30ミクロン帯の観測においてもほぼ完全に大気放射の影響を取り除くことができるようになり、miniTAO/MAX38が期待される検出感度を達成できるようになった。また10~20%程度の精度で天体の明るさを見積もることができるようになり、ダスト形成量を見積もる上では十分な精度となった。 開発したデータ解析手法を利用して、η Carinaeの星周ダストの空間分布と温度分布を求めた。その結果、星周ダストは大きく分けて(1)中心星の近傍(>200K)、(2)双極シェル状(140~180K)、(3)シェル内部(120~130K)の3つのコンポーネントからなることが分かった。(3)の成分は今回の観測で初めて明らかになったものであり、30ミクロン帯という従来の中間赤外線の観測波長域より長い波長で観測を行うことによる優位性を示すことができた。
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