研究課題
オンチップ光配線用の光源として小型・極低消費電力動作が期待される強光閉じ込め効果を用いた極低電流動作半導体薄膜DFBレーザの実現および高速動作化を目的としている。強光閉じ込め構造を有する半導体薄膜レーザはその高結合回折格子の効果により極低しきい値かつ高速動作が期待されており、これまでには主に光励起による動作が報告されてきたが、実用化に向けて電流注入動作の実現が大きな課題となっていた。この問題解決に向け本研究では横方向電流注入構造を採用し半絶縁性基板上の横方向電流注入構造を有するデバイスの高性能化を図った。まず、横方向電流注入型レーザに分布量子井戸構造を導入することにより内部量子効率の向上を図り、試作したデバイスにおいて内部量子効率を従来の約40%から一般的な半導体レーザと同等の値である約70%に大幅に向上された。また、半導体薄膜レーザの高速変調特性の実現に向け、横方向電流注入構造における共振器内でのキャリア遅延による帯域律速の影響を見積もった。この結果をもとに半導体薄膜レーザの高速変調特性の実現に向けた構造検討を行い、コア層厚150nmの薄膜構造およびストライプ幅1μm程度の狭ストライプ構造により10Gb/s以上の高速変調特性と駆動電流値1mA以下の極低電流動作が可能であることを理論的に示した。これら、横方向電流注入型レーザの高性能化に加え、従来の目的であった電流注入型半導体薄膜レーザについても設計・試作を行った。これまでに低屈折率材料であるベンゾシクロブテン(BCB)を用いることでInP基板にレーザウエハを貼り付け、横注入構造および表面回折格子構造を有する薄膜レーザを実現し、しきい値電流値3.8mAの電流注入動作を得た。(未発表)以上の成果により今後、極低電流動作半導体薄膜DFBレーザの実現および高速動作化が期待される。
2: おおむね順調に進展している
半導体薄膜DFBレーザで理論的に予測される駆動電流値1mA以下の動作に向けて、本年度までに最大の課題であった電流注入動作が実現され、更に発振しきい値も11mA程度まで改善された。これらの作製技術等が確立されつつあり、今後目標である極低電流動作に向けた構造設計・試作を行う事で十分当初の目標を達成することが可能であると考えられる。
半導体薄膜レーザの電流注入動作およびしきい値電流値の改善がこれまでになされており、今後は目標である極低しきい値動作に向けた構造設計が必要とされる。これまでは作製プロセスの確立のために比較的作製が容易な半導体膜厚および素子サイズを設計値として用いていた。今後は、極低しきい値動作に向けて最適化された構造やプロセスを導入し試作することで十分目標を達成しうると考えられる。
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