研究概要 |
マイクロブログ等のソーシャルウェブサービスを代表とするインターネット上の人間同士のやりとりを、協力行動における間接互恵性理論(お互いの評判を共有して協力し合う社会のモデル)を用いて、どのようにして協調的な社会を構築することができるかを理論的に考察した。本年度は昨年度に引き続いて、大規模社会における協力の一般モデルの数理解析を行った。特に、間接互恵性においてコストのかかる情報共有の怠りや、意図的な誤情報の伝播のリスクに対して社会が安定的であるかどうかに着目した研究を、オーストリアのInternational Institute for Applied Systems Analysis(IIASA)と共同で行った。本年度は社会が情報共有の怠り対して安定的である条件に着目した。プレイヤーの行動を観察しコストをかけて情報を提供するプロバイダーの戦略を、どれくらいの頻度でゲームを観察するか(確率q)、どれくらいの価格で他の個体に売るか(価格β)の連続戦略で考え、その適応ダイナミクスを調べた。図1に、矢印の流れに沿ってプロバイダー集団の戦略(q,β)が進化する様子を示す。集団は最終的に協力的な安定点もしくは非協力的な安定点のどちらかの状態に行き着く。協力的な安定点では、プロバイダーは確率1でゲームを観察し、均衡価格β=M/[s(M-1)]でプレイヤーから報償される健全な社会維持される。このような社会が実現可能である条件はMs<ω/γであり、Msは小さい方が好ましい。ここでMはプロバイダーの個体数、sは低価格が好まれる程度、ωは定数、γは観察のコストである。プロバイダー間の競争が激しければ(M,sが大きければ)均衡価格βは小さくなり市場は効率的になるが、逆に健全な社会の維持は難しくなることを明らかにした。
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