研究概要 |
脊柱後端部の形態は脊椎動物の進化の過程においてダイナミックに変化しており、脊椎動物の進化を理解する上で非常に重要な形質である。特に真骨魚類では脊柱後端部が背側に屈曲することで尾鰭の機動性を上げ、水中での生活に適応していると考えられる。しかし、脊柱後端部に関しては形態学的な理解は進んでいるものの、その発生過程における形態形成の分子メカニズムは全く解明されていなかった。そこで、本研究では脊柱後端部が背側に屈曲せず、尾部骨格の形態が変化するメダカ自然突然変異体Double anal fin(Da)を解析することによって脊柱後端部における形態形成、形態進化の分子メカニズムを解明することを目的とした。今年度の主な成果は以下の二点である。1.Daの原因遺伝子の確定:BAC transgenic法によるDa系統のレスキュー実験を行い、Daの原因遺伝子がzic1, zic4であることを証明した。このことから、メダカにおいて、脊柱後端部の背側への屈曲にはzic1, zic4が必要であることが示された。2.zic1, zic4の発現パターンの詳細な解析:zic1, zic4の発現パターンを詳細に調べたところ、発生過程において脊索後端が背側に屈曲するタイミングに先立ってzic1, zic4が尾部後端背側の硬節、間充織において強く発現することを明らかにした。Daではzic1, zic4のこの領域の発現が消失しており、尾部後端背側の硬節、間充織におけるzic1,zic4の発現と脊索後端の背側への屈曲の相関関係が示唆される。以上のように、本研究の成果はこれまで全く知見の得られていなかった脊柱後端部における形態形成の分子メカニズムの一端を明らかにしたものであり、脊椎動物の発生・進化を理解する上で重要な知見の一つであると言える。
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