<内容>修士論文の成果を学術雑誌に投稿するとともに、先行研究が想定している「匿名に対する幻想」仮説が現代の我が国の子ども達に当てはまるのか、小学校高学年児童を対象として予備的な質問紙調査を実施し、得られた知見を学会で発表した。なお、その他の研究活動として、依頼された書評の執筆などを担当した。 <意義>研究代表者自身の前年度までの研究を含む先行研究においては、主として教育する大人の視点から「いかに教えるべきか」について効果的な授業デザインを検討してきた。しかし、本研究において予備的な質問紙調査を実施した結果、先行研究が暗黙のうちに想定してきた子ども像には根本的な見落としがある可能性が示唆された。具体的には、子ども達が「匿名に対する幻想」を持っている、という先行研究の仮定は間違いであり、現代の我が国の子ども達の多くは小学校高学年時点で既に「インターネットでは誰が何をやったか分かる」と考えている可能性が示唆された。今後は、「not匿名に対する幻想」、という議論を踏まえて、「では、どう考えているのか?」を子ども達の視点に立って探索的に研究する必要がある。本研究が提供する知見は、将来的に現行の情報モラル教育の有り方の見直しに繋がる可能性がある。 <重要性>情報技術の基本的特性について、子ども達の視点に立って日常経験の中で形成された理解の様子を実証的に検討した先行事例は無い。本研究は未だ理論的完成に至ってはいないが、未開拓の研究領域に着手している点で重要であると考えられる。
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