研究課題/領域番号 |
10J09096
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌倉 哲史 東京大学, 大学院・情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 情報モラル教育 / 小学校 / 追跡可能性 / インターネット / 匿名性 / プロフィール主義 |
研究概要 |
<内容>情報モラル教育に関する基礎的研究として、情報技術の基本特性の1つとしての追跡可能性に関する子ども達の理解の様子を質問紙調査・インタビューを通して探索的に検討するとともに、そこで得られた知見に基づく教育実践ワークショップを実施し、その効果を検討した。 <意義>研究代表者自身の前年度までの研究を含む先行研究においては、主として教育する大人の視点から「いかに教えるべきか」について効果的な授業デザインを検討してきた。しかし、本研究において予備的な質問紙調査を実施した結果、先行研究が暗黙のうちに想定してきた子ども像には根本的な見落としがあることが示唆された。具体的には、子ども達が「匿名に対する幻想」を持っている、という先行研究の仮定は間違いであり、現代の我が国の子ども達は小学校高学年時点で既に「インターネットでは誰が何をやったか分かる」と考えている可能性が示唆された。そこでインタビューで子ども達の理解の様子を探ったところ、「プロフィール主義」と呼ぶべき新たな子ども達の理解の様子を発見するに至った。この発見がどのように教育現場に応用し得るか、モデルケースを示すため、小学校にて放課後ワークショップを実施し、現在そのデータを分析中である。本研究が提供する知見は、将来的に現行の情報モラル教育の有り方の見直しに繋がる可能性がある。 <重要性>情報技術の基本的特性について、子ども達の視点に立って日常経験の中で形成された理解の様子を実証的に検討した先行事例は無い。本研究は未だ理論的完成に至ってはいないが、未開拓の研究領域に着手している点で重要であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、修士論文の時点で想定していた子ども像に基づき効果的な授業デザインを検討することを目的としていた。ところがその後の調査によって子ども像の見直しを図る必要に迫られ、大幅に研究計画を見直す結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の理由で研究の進捗は当初の計画からやや遅れていると判断されるものの、子ども像の見直しの必要性については他の研究者を含む先行研究全体に関わる重要な発見である。そこで、平成24年度に関してはこれまでに得た「三角積み木モデル」、「プロフィール主義」といった独自の理論・記述法についてさらに理論的精緻化とデータによる補完作業を推し進め、その成果を博士論文としてまとめ上げることを目指す。
|