研究課題/領域番号 |
10J09260
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内海 俊介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 生態-進化ダイナミクス / 群集-進化フィードバック / 食害誘導反応 / 表現型可塑性 / 間接効果 / 群集構造 / 生物多様性 |
研究概要 |
植食者群集の動態と植食者の形質進化の間のフィードバック機構を解明するために、野外操作実験を行った。1.今年度はまず、ハムシの適応形質の変異が植食者群集の構造にフィードバックするという仮説を検証するたに、複数のハムシ個体群を相互の地域に移植して寄主植物(ヤナギ)を実際に摂食させ、その後に定着する昆虫群集の動態を追跡した。その結果、わずか6日間の摂食にも関わらず、その後少なくとも三ヶ月間に示された昆虫群集の動態は、一貫してはじめに摂食させたハムシの形質の変異に大きく依存した。植物の資源量の状態を示すパラメータの動態にはまったく違いがなかったことから、植物の可塑的な質の変化がこのような結果をもたらしたと考えられる。これは、植食性昆虫の適応形質の変異が、植物の形質変化を介して生物の群集集合の過程を決定するという先住効果を示すもので、きわめて新規性の高い結果である。圃場でもあわせて同様の野外操作実験を行ったところ、先の実験結果と類似した結果が得られた。したがって、植食性昆虫の適応的な選好性形質の違いが、植物の形質変化を介してその後の昆虫群集の動態に影響を及ぼすことが明らかになった。2.また、植食者群集が寄主植物の食害誘導反応を介してハムシの適応形質の進化に与える影響を解明するため、食害誘導反応の特異性を検証する操作実験を行った。植食者7種を用いて、植物が食害後に示す再生長反応の強度を比較したところ、高い種特異性が検出された。さらに、植食者の密度を変えて同様の実験を行ったところ、密度の効果は検出されず、もっぱら食害を与える植食者の種の特性に植物の反応強度が依存することが分かった。以上の結果は、現在複数の学術論文として投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に則って順調に研究を進めることができ、期待する成果が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目は本研究課題の最終年であり、現在投稿中のものも含めてこれまでに得られた成果を逐次学術論文として発表していく。また、計画通り、まだ完了していていない分子解析を進めるとともに、これまでに得られた知見をもとにした理論モデルの構築を行う予定である。
|