研究課題
本年度は、1.研究成果発表、2.ヤナギルリハムシの集団遺伝解析、3.寄主植物ジャヤナギの集団遺伝解析、の3点を目標として研究を進め、それぞれ達成することができた。1については、国内外での学会発表によって本研究課題の研究成果を広く発信するとともに、生態学分野の最上位ジャーナルであるEcology Letters誌で論文を発表した。この論文は、「地域固有の昆虫群集の構造が、間接相互作用のネットワークを通して群集構成種(ハムシ)の餌選好形質の進化に影響を与え、その多様化を促進する」ということを、野外データと綿密な操作実験によって実証することに世界に先駆けて成功したものである。この成果は、各種メディアで取り上げられた。また、この形質進化が相互作用ネットワークの改変によって昆虫群集の構造にフィードバックする、という結果も得られており、群集と進化のダイナミクスにおけるフィードバック機構が明らかになりつつある。さらに、これらの成果を含む一連の本研究課題の成果について、日本生態学会宮地賞の受賞論文として総説をまとめた。その論文は、国際誌Ecological Research誌に受理された。2と3については、主に京都産業大学との共同研究によって行った。ハムシの集団遺伝解析では、10kmほどの小さな空間スケールにおいても集団間の遺伝的分化が生じていることを示唆する結果が得られた。ヤナギの集団遺伝解析では、80種類のRAPDプライマーを用いた多型解析を行った。ハムシの表現形質と遺伝構造の集団間分化が進んでいるのに対して、こちらではほとんど多型が検出されなかった。この結果は、寄主植物一昆虫の共進化という従来の見方を越えて、植物の可塑性を基盤とした昆虫群集の間接相互作用ネットワークによっても、昆虫の進化と多様化が促進される、という本課題の研究成果を支持するものと考えられる。
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Ecology Letters
巻: 16 ページ: 362-370
10.1111/ele.12051
Ecological Research
巻: (印刷中)
10.1007/s11284-013-1042-0
http://www.hokludai.ac.jp/news/121226_pr_fsc.pdf