研究概要 |
光増感部に[Ru(N^N)_3]^<2+>(N^N=ジイミン配位子)、触媒部に[Ru(N^N)_2(CO)_2]^<2+>を有する超分子光触媒の反応機構を検討した。犠牲還元剤1-benzyl-1,4-dihydronicotinamide(BNAH)の酸化生成物を詳細に分析した結果、BNAHは1電子酸化二量体BNA_2に定量的に変換されていることが分かった。これらの結果から、この光触媒反応の物質および電子収支を確定させた。さらに、ギ酸生成に必要な2電子は、光増感部が励起されBNAHによって還元的に消光される反応が2回起こることによって供給されていることを見出した。超分子光触媒系ではこれまで分かっていなかった、2電子還元反応における2電子目の供給源を初めて明らかにした。また、長時間光照射をすると光触媒反応が失活する原因の1つが、系中に蓄積したBNA_2が光増感部の励起状態を還元的に消光した後に逆電子移動を起こす過程だと分かった。この過程は吸収した光子を無駄に消費していることになるので、光触媒反応の失活に直結する。 これまでの結果に基づいて、光触媒能の向上に取り組んだ。光増感部と触媒部の数量比を2:1と最適化し、光増感部および犠牲還元剤を改良した。ギ酸生成の量子収率は3.8%から10%に向上し、ターンオーバー数は670、ターンオーバー頻度は12min^<-1>に達した。これまでに報告されているCO_2還元光触媒で最も速く回転する光触媒系を構築することに成功した。
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