研究概要 |
光増感部としてルテニウム(II)トリスジイミン錯体、触媒部としてレニウム(I)カルボニル錯体およびルテニウム(II)カルボニル錯体を有する超分子錯体は、CO_2を還元しそれぞれCOおよびギ酸を生成する光触媒として働く。犠牲還元剤として1-benzyl-1,4-dihydronicotinamide(BNAH)を用いた場合、BNAHが1電子酸化、脱プロトン化された後の二量体BNA_2が光触媒反応を阻害していることが分かった。すなわち、光触媒反応が進行し系中にBNA_2が蓄積していくにつれて、光触媒反応速度が低下する。これを回避するため、犠牲還元剤をBNAHから1,3-dimethyl-2-aryl-2,3-dihydro-1H-benzo[d]imidazole(BIH)へと変更した。その結果、Ru-Re錯体によるCO生成では量子収率54%、ターンオーバー数3029、Ru-Ru錯体によるギ酸生成では量子収率46%、ターンオーバー数2555と飛躍的な光触媒機能の向上が達成された。これは、BNAHを用いた場合と比較して量子収率で3-7倍、ターンオーバー数で5-15倍に向上しており、これまでに報告されている可視光で駆動する超分子光触媒で圧倒的に最も高い値である。 またギ酸を生成する光触媒として働くルテニウム(II)二核錯体について、藤田博士(Brookhaven National Laboratory)の御協力もと、反応機構について検討した。その結果、触媒部の1電子還元種の紫外可視吸収スペクトルが初めて得られた。また、二核錯体が1電子還元された際の光増感部と触媒部への電子分布を明らかにした。
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