研究概要 |
本研究では、クロマチン構造変換因子SWI/SNF複合体とNFκBを仲介するcoactivatorとして機能しうるタンパク質としてDPF1,DPF3,PHF10に着目し、これらの因子とNFκBダイマーの組み合わせの違いがNFκBの標的遺伝子の制御に選択性をもたせるのではないかと仮定した。平成22年度は、研究計画に基づき以下の項目を実施した。 1.特異抗体の作製 DPF3,PHF10に対する有効な抗体が市販されてないため、各々のタンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。得られた抗DPF3血清および抗PHF10血清をウェスタンブロット法により評価したところ、どちらの抗血清もファミリータンパク質問での交差反応を起こさずに目的のタンパク質のみを検出した。また、抗DPF3血清については免疫沈降法にも用いることができると分かった。これらの抗血清は、今後の研究計画を進めるにあたり有効なツールとなることが期待される。 2.ルシフェラーゼレポーターアッセイ DPF1,DPF3,PHF10がNF-κBのcoactivatorとして機能するか否かを調べるため、レポーターアッセイによる評価を行った。まず、HIV-1由来のNFκB応答配列をプロモーターの上流に組み込みNFκB依存的にルシフェラーゼを発現させるベクターを構築し、これを293FT細胞株へ導入して安定発現株を得た。この細胞株にRelA/p50,RelB/p52,c-Rel/p50の3種類のNFκBヘテロダイマーをDPF1,DPF3,PHF10と様々な組み合わせで外来から過剰発現させ、ルシフェラーゼの発現レベルを測定した。その結果、RelA/p50ヘテロダイマーによるルシフェラーゼの発現誘導をDPF3がさらに強めることが分かった。また、同じ細胞株を用いてDPF3に対するshRNA発現ベクターを導入して内在のDPF3の発現を抑制すると、細胞株をTNF-αで刺激して内在のRelA/p50ヘテロダイマーを活性化させてもルシフェラーゼの発現誘導が著しく弱まった。これらの結果から、DPF3は特にRelA/P60のcoactivatorとして機能しうることが示唆された。
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