研究概要 |
地球マグマオーシャンの化学分別の中でも金属核とケイ酸塩マントルの分離過程を解明することは非常に重要である。Ikoma and Genda (2006)は原始地球がマグマオーシャンに覆われていたころ、地球には水素大気が存在していた可能性があると主張している。その場合マグマオーシャンには多量の水が含まれる。また、Fukai(1984)によって高圧力条件下において水素が鉄中に多量に固溶することがわかっているため、含水マグマオーシャンと共存していた金属核中にも水素が取り込まれた可能性が十分に考えられる。軽元素は金属の融点に大きく影響する。我々のグループでは水素飽和条件下において実験を行い水素が固溶しFeHを作ることで鉄の融点が500-600℃低下することを確かめた(Sakamaki et al., 2009)。しかしながら実際の地球形成過程は金属鉄と含水ケイ酸塩間で引き起こされる鉄-水反応によって起こると考えられる。そこで本研究では含水鉱物を水素供給源とした不飽和な系において鉄水素化実験を行った。実験はSPring-8のBL04B1に設置されているマルチアンビル型高圧発生装置を用いて行った。SPring-8で高温高圧X線その場観察実験を行うことで高温高圧下における鉄中の水素量やそのときの融点を調べることができる。実験によって得られた回折線から鉄中に含まれる水素量を見積もり、その温度依存性、圧力依存性、融点を得た。これらを用いて鉄-水素系の相平衡図を作成することができる。本研究では16GPaにおける鉄-水素系の相平衡図を作成した。鉄-水素系の相平衡図が実験的に得られたのは本研究が初めてである。
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