液晶は高密度になると配向構造を形成する。この性質を利用し、液晶と光硬化モノマーの混合物に紫外線を照射すると、光重合の過程で相分離が起こり、高分子中に配向状態の液晶液滴が分散した「ポリマー分散型液晶 (PDLC)」を作製することが出来る。PDLCは光シャッターなどへの応用が期待されているが、使用する液晶量が多くコストが高いことが実用化への課題となっている。前年度までの検討により、反応温度を相分離温度近くに設定することで、従来制御が難しかった低液晶分率の領域でもPDLC作製できることが明らかとなった。しかしこのときの反応温度は0℃以下であり、この温度でのフィルム作製は実用上困難であった。本年度は、液晶とモノマーの組み合わせを変えることで、この相分離温度の制御を検討した。その結果、相分離温度を室温付近に上昇させることに成功し、低液晶分率かつ室温付近でPDLCを作製することが可能となった。 また、血管内皮細胞は、せん断流れを与えると配向構造を形成する。液晶と同様に、内皮細胞の配向にの場合も密度が支配的因子なのではないかと考え、配向に対する細胞密度の影響を検討した。その結果、配向形成には閾値密度が存在し、その密度以下では配向が起こらないことが分かった。さらに数値計算的な検討から、この閾値熱パーコレーション閾値と概ね一致することが明らかとなった.これは、細胞同士が一つのネットワークとしてつながっていることが、配向構造の形成に必須であることを示している。せん断の刺激が接着結合を介して細胞間で伝達されろことで、配向形成が誘起されるのだと考えられる。このダイナミクスを可視化するために、長期観察に耐えうる光安定性と低い毒性を兼ね揃えた新規蛍光マーカーとして、蛍光Siナノ粒子の開発を行った。配向形成の直接観察までには至らなかったが、細胞内の選択的な長期かつ可視化などが可能であることを明らかにした.
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