研究課題
今年度は、2007年-2009年の湖水中及び堆積物中硫黄同位体比の解析を中心に研究し、太古代-原生代境界復元のための古海洋モデルの基礎を構築した。今年度の研究成果は以下に記す2編の論文にまとめる。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための文献の購入費、分析に必要な実験器具、解析するためのPC周辺機器に当てられた。1.2007年-2008年の湖水中硫黄同位体比解析についての論文は「Sulfur mass balance and seasonal change of microbial sulfur cycles in stratified lakes : A case study from monomictic Lake Fukami-ike, Japan」という題名で現在投稿中である。この論文では、硫酸還元過程と嫌気光合成過程に注目し、報告例の少ない単循環成層湖における硫黄循環に関して執筆した。成層湖深見池(長野県)における硫黄収支から、この湖は表層水が主な硫黄源であり、地下水としての流入がほとんどないことを示した。このため湖底にて安定した還元環境が成層期間中形成され、成層してからの経過時間に伴い硫酸還元と嫌気光合成の相対的な代謝速度が変化することをボックスモデル解析により明らかにした。2.2009年の湖水と堆積物試料からえられた四種硫黄同位体比変動に関しては、現在執筆中である。この論文では、1の論文で明らかにした2種の硫黄同位体(質量数32、34)情報に新たな2種の硫黄同位体(33と36)を加えてより定量的な解析を行う。湖水中における四種硫黄同位体が堆積物中でどのように保存されるかを考察し、湖水と堆積物を含んだ系で硫黄循環モデルを構築する。
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