研究課題/領域番号 |
10J09475
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山根 祥吾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 液晶 / 発光 / 刺激応答 / 配向処理 / 偏光発光 |
研究概要 |
近年、外部刺激に応答して発光特性の変化する材料がセンサーやメモリー等への応用を目指し、盛んに研究されている。中でも分子構造の変化ではなく分子の集合状態の変化により発光特性を変化させることのできる材料は耐久性に優れたものとなる可能性があるが、この様な特性を示す明確な分子設計指針の確立には至っていないのが現状である。そこで本研究では結晶の秩序性と液体の流動性を併せ持つ機能性材料である液晶に着目し、刺激応答性発光材料の開発を目指している。本研究ではTwisted Intramolecular Charge Transfer(TICT)状態からの発光を示す9,9'-ビアントリル(BA)に着目し、液晶化および機能化を試みた。液晶性を発現させるためのメソゲンを導入したBA誘導体を数種設計・合成した所、これらの合成したBA誘導体は室温を含む温度範囲で液晶性を示すことがわかり、BAにスメクチック液晶性を付与することに成功した。さらに、いくつかのBA誘導体は機械的せん断を印加することで発光特性の変化するメカノクロミックルミネッセンスを示した。この分子は加熱、冷却を繰り返すことで再び元の発光を示すようになった。また、この分子をポリイミド配向膜を用いて一軸に配向させることに成功し、配向したBA誘導体は偏光発光特性を示した。以上のような結果から、BA誘導体は、光機能性材料として有用であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部刺激応答性を示すBA誘導体の開発に成功し、刺激応答性材料開発へ向けた分子設計指針を新たに示すことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。しかしながらいまだ十分な応答速度、発光波長の変化を達成したとは言えないため、さらなる検討が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
BA誘導体が刺激応答性発光材料として有用であることは示すことができたものの、刺激応答速度の向上やより大きな発光波長の変化など、改善すべき課題はいまだ残されている。このため、これらの課題を解決するべく新規化合物を設計・合成し、分子構造と分子集合構造並びに発光特性の関連を調査する予定である。
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