研究概要 |
超高速光ネットワーク応用において低消費電力動作・小型実装が可能な面発光レーザ(VCSEL)は重要なキーデバイスとなる.半導体レーザの波長温度係数は温度に対する素子内屈折率変化により決まり端面出射型レーザではおよそ0.1nm/Kである.このような性質は面発光レーザにおいても問題であり,例えば温度変化による波長シフトが挙げられる.VCSELは垂直短共振器であることからマイクロマシン(MEMS)の集積が可能である.これまで上部DBR反射鏡をマイクロマシン構造にすることで電気的あるいは熱的に変位制御・波長掃引をするMEMSVCSELが精力的に研究されてきた.本研究は,面発光レーザに熱駆動のマイクロマシン構造を集積することで波長温度係数の制御を提案し,これまで波長分割多重通信の低消費電力化を可能とする波長が温度に対して安定な温度無依存(アサーマル)動作を報告してきた.今年度は作製したアサーマル面発光レーザにおいて活性層への電流注入量を増大させることで熱光学効果を用いた波長掃引動作を行い,アサーマル動作と波長掃引の両立を実証した.アサーマル動作と波長可変動作の両立は,デバイスレベルでは,端面発光型半導体レーザも含めて未だ報告例がなかった.一方,面発光レーザには単一モード発振を維持するために発光面積および出力パワーが制限されるという課題があった.そのため多くの機関から研究がなされたが,活性領域の拡大に伴い高次モードに対するフィルタリングが十分でなかった.そこで本研究では,広帯域かつ高反射率な反射鏡として近年注目されている高屈折率サブ波長格子(HCG反射鏡)を面発光レーザに適用することにより,HCG反射鏡の角度依存性を利用した新しいモード制御の手法を提案し検討を行った.この手法の利点は全ての高次モードを避けることができる点にあり,大口径化による高出力化,低抵抗化,ビーム品質の向上が期待できる.
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