研究課題/領域番号 |
10J09481
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 大吾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 液晶 / カラムナー / 強誘電性 / 電場配向 / 高密度メモリー |
研究概要 |
本研究はお椀状分子を用いてこれまで誰も開発に成功していない強誘電性カラムナー液晶の開発を大きな目標としていた。強誘電性カラムナー液晶はカラム1本1本がメモリーになるため超高密度メモリーへの応用が期待されている。また液晶であるがゆえに、溶液プロセスでのデバイス作成が可能となり製造コストを大きく下げることも期待できる。また無機系強誘電体と比べ、レアメタルを用いない点も魅力的である。当該年度においては、この目標を達成することに成功した。鍵となるコンセプトは、極性構造を安定化するための水素結合ネットワークのデザインである。これまで強誘電性カラムナー液晶が達成されて来なかったのは、液晶という動的な系において、極性構造を維持できなかったからである。双極子モーメントは打ち消し合いたがるからである。しかしながら、極性構造をただ安定化してやればいいというものでもない。なぜなら強誘電性とは、自発分極を保持し、かつその分極を電場によって反転することが出来なければならないからである。すなわち、極性構造を安定化させ過ぎると、今度は電場によって反転することが出来なくなる可能性があるからだ。実際に強誘電性を実現するために、水素結合の周りを少しずつ変化させた誘導体を多数合成し調べることで最終的に強誘電性の実現に至った。この水素結合を利用して極性構造を間接的に安定化させるというコンセプトはこれまでだれも提案・実現したことがなく、また強誘電性カラムナー液晶自体、20年以上提案され続けて来たものの誰も実現することが出来なかった。そのため、本研究成果はScience誌に採択された。また他にも水素結合を利用してディスコティックカラムナー液晶の配向を制御できる普遍的な分子デザインの開発にも成功し、その成果がAngewandte Chemie International Editionに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的である、強誘電性カラムナー液晶の開発に世界で初めて成功した。研究提案段階とは用いている分子が異なるが、お椀状であることにはかわらず、コンセプトは維持されている。用いる分子を変えたのは、得られた実験結果を鑑みた結果、新しい分子の方が目的に適していると判断したからであり、ポジティブな変更と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
開発に成功した強誘電性カラムナー液晶は、超高密度メモリーなどへの応用が期待される。そのためには現状より極性反転のスピードを早く、作動温度をより低く改良する必要がある。これらは、どちらも分子間の相互作用を下げてやることによって達成できると考えられ、アルキル鎖等を増やした分子の開発に取り組んでいる。
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