研究概要 |
本年度は,以下の研究を実施した (1)データの吟味:解析に用いるHi-net検測値データ(防災科学研究所)を吟味した.地震規模,震源地,検測者の違いによるデータ特性の把握に努めた.今年度は,東北地方の地震データを入手し,解析に向けた準備を始めた. (2)S波方位異方性トモグラフィー法の開発:定量的な議論を進めていくためのひとつの要素として,S波方位異方性の3次元構造推定を開始した.今回は,最初の試みとして,中国・四国地方を対象領域に選定した.まずは,手法とデータ(気象庁一元化データ)の確認のため,数値実験を実施した.加えて,実際の観測データに適用して,当該地域における3次元のS波方位異方性速度構造を求めた. (3)P波鉛直異方性トモグラフィー法の開発:近年,鉛直異方性の重要性が再認識されている.地球規模では標準モデルに組み込まれるほどその存在の重要性と普遍性が確かめられているが,地域的な解析では未だ不明な点が多い.そこで,鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を開発し,東北地方の3次元鉛直異方性速度構造推定を実施した. (4)S波異方性の時間変化の検出:異方性と応力場の関係は広く受け入れられているが,この関係は,全ての観測において普遍的にみられるわけではない.この原因として,変動の大きさや観測網の整備状況の問題が挙げられる.そこで本研究では,日本列島規模で地震活動が変化するような変動が齎された東北地方太平洋沖地震に注目し,その発生前後における地殻内の異方性の変化の検出を試みた.対象領域は当該地震の発生により,最も地震活動が変化した茨城-福島県境地域である. (5)関東地方のP波異方性速度構造に関する論文を国際誌に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最も時間のかかる可能性のあった解析手法の開発は概ね完了し,また,これを用いた解析も始められたのでその点は評価できる.しかし,出産および育児により,申請時に予定していたほど研究時間がとれず,解析が予定よりは多少遅れ気味になっている.また,論文投稿についても予定していたほど捗らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した手法を用いて,予定通り解析を続ける.そして,得られた結果を用いて地球内部のダイナミクスの定量化を図る.当初予定に変更は無い.ただし,データ取得のためにイギリスへの渡航を予定していたが,子ができたため実現は難しいかもしれない.よって,データ取得の方法を変更する可能性がある(郵送等).
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