研究課題/領域番号 |
10J09496
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石瀬 素子 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 地震波異方性 / 地震波トモグラフィー / 地球内部構造 |
研究概要 |
実体波を用いて地球内の詳細な三次元異方性速度構造を明らかにし、これを基にして地球ダイナミクスの定量的な議論を行うため、本年度は以下の研究を実施した。 (1)P波鉛直異方性トモグラフィー法の開発:近年、鉛直異方性の重要性が再認識されているげ地球規模では標準モデルに組み込まれるほどその存在の重要住と普遍性が確かめられているが、地域的な解析では未だ不明な点が多い。そこで、鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を開発した。 (2)(1)で開発した鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を東北地方の地震データに適用し、東北地方の地殻およびマントルにおける3次元鉛直異方性速度構造推定を実施した.得られた鉛直異方性は、地殻領域では水平方向に伝播する地震波が鉛直方向に伝播する地震は速度よりも速いのに対し、深さ70~100kmの深さ領域では鉛直方向に伝播する地震波が水平方向の伝播速度よりも速いという深さ変化を示した。また、鉛直異方性の地域性については、地震め等深度線の走行と直交する方向に形成された火山帯の下(ホットフィンガー)で鉛直異方性が強いことが示された。加えて同じデータを用いて三次元方位異方性速度構造推定を実施したところ、最終的な構造に対する走時残差は鉛直異方性解析で得られた構造に対する値よりも大きく、鉛直異方性の重要性が示された。 (3)Hi-net(防災科学技術研究所)で記録された全走時データを取得した。 (4)関東地方のP波方位異方性速度構造に関する論文の修正版を投稿するための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最も時間のかかる可能性のあった解析手法の開発は概ね完了し,また,これを用いた解析も始められたのでその点は評価できる.しかし,育児と更なる妊娠により申請時に予定していたほど研究時間がとれず,解析が予定よりは多少遅れ気味になっている.論文投稿については、査読者からのコメントに答えるための解析を新たに行い、これを基にした修正を終えることができた。来年度中の雑誌掲載が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した手法を用いて,予定通り解析を続ける.そして,得られた結果を用いて地球内部のダイナミクスの定量化を図る.当初予定に変更は無い.ただし,データ取得のためにイギリスへの渡航を予定していたが,子ができたため実現は難しいかもしれない.よって,データ取得の方法を変更する可能性がある(郵送等).
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