本研究の目的は、1610~1640年代にかけての東アジア情勢のなかで、朝鮮王朝の通商政策が形成された過程を明らかにすることにある。 申請者はまず予備的発表として2010年6月19日に朝鮮史研究会関東部会月例会で口頭発表を行い、近接分野の研究者と情報交換を行った。その中で朝鮮国内の政治的側面だけでなく経済的側面に注目する必要性を認識した。 口頭発表の後、朝鮮、明、後金(清)の複数の主体の資料の収集を本格化した。特に集中して取り組んだのは明および後金(清)と朝鮮の間を往来した外交文書である。6月下旬と9月上旬に京都大学(附属図書館河合文庫、文学研究科図書館、人文科学研究所東アジア人文情報学研究センター)で朝鮮の外交関連写本調査を行った。京都大学の各図書館では、従来知られている写本とは別系統の写本を原本調査し、史料批判の基盤を整えることができた。ついで7月には台北の中央研究院歴史語言研究所図書館と故宮博物院図書文献館にて明清期の朝鮮関連歴史档案の調査を行った。台湾では内閣档案の原本画像を収集し、活字化された史料集にはない情報を得ることができた。 その後11月7日に史学会東洋史部会で口頭発表した。東洋史部会では中国史などの分野の研究者からのコメントを頂戴した。 さらに12月に中国北京の中国第一歴史档案館および国家図書館で文献調査を行った。北京では、京都および台北で調査した写本の類似資料を実地で調査した。 2010年度中の研究成果は2011年度中に論文発表を行う予定である。
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