研究概要 |
これまで代表者らは、C型レクチンの一種DC-SIGNが結腸がん細胞株SW1116を認識すること、認識にはSW1116細胞上の糖タンパク質である癌胎児性抗原(CEA)が関与していることを既に明らかにしている。しかしながら、これまで結腸がん細胞上の他のDC-SIGNリガンドは調べられていない。本年度において代表者らは、結腸がん細胞株COLO205上に発現するDC-SIGNリガンドとしてMac-2 binding protein (Mac-2BP)を、DC-SIGNアフィニティーカラムおよび質量分析法を用いて新たに同定した。DC-SIGNは細胞膜由来および培養上清中のMac-2BPにCa^<2+>依存的に結合し、その親和性(見かけ上のKd=2.50nM)は高かった。また、PNGase Fおよびal-3,4-フコシダーゼ処理によりDC-SIGNとMac-2BPの結合が消失したことから、結合にはN型糖鎖上のルイス式糖鎖抗原が関与することが示唆された。さらに、MoDC (Monocyte-derived dendritic cells)とCOLO205を共培養すると細胞同士の接着が起こり、LPS添加時におけるMoDCからのIL-6、IL-10の分泌が促進、TNF-αの分泌が抑制されること、MoDCの成熟マーカーであるCD83、CD86の発現が抑制されることを明らかにした。このことは、DC-SIGNを介した結腸がん細胞の認識が、がん細胞による免疫機構からの逃避を助けることを示唆するものである。
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