電子・無線・光領域をシームレスに接続する事が可能な素子として、THz-光信号直接変換技術及び3電気端子を有する光増幅器・光源などの研究を行っている。昨年度は、特に次世代システムにおいて利用可能な、3電気端子を有する長波長帯トランジスタレーザ(TL)の実現に向け、理論解析・素子作製を行った。理論解析においては数値計算法によりその動作機構を解明するとともにレーザダイオード(LD)では実現困難な40Gbpsでの高速変調の可能性を示し、TLの優位性を示した。一方、素子作製に向けては、導入予定の埋め込みヘテロ(BH)構造形成法に関する検討を行った。本研究で用いるAlGaInAs/InP材料系は、空気中で酸化されやすいという問題があり、その成長界面評価法も確立していない。本研究においては表面再結合速度Sを用いた成長界面評価を行い、その指数であるSτ値で12nmと良好なBH構造形成を実現した。この値は、GaInAsP/InP-BH-LDでの68nmと比べても低く、酸化影響の無い構造形成に成功した。 また、ストライプ幅1.6μm、共振器長500μmにおいて注入効率76%、しきい値電流密度J_<th>=1.0kA/cm^2と、世界最高水準の性能を有するAlGaInAs/InP-BH-LD作製に成功した。 また、実際にTL作製を行い、ストライプ幅1.8μm、共振器長500μmのp/n/p型のTLにおいてしきい値エミッタ電流密度J_<Eth>=1.9kA/cm^2、注入効率47%などを実現し、室温連続発振動作及びコレクタ電圧による光出力制御を得た。本素子は、別個の素子を同一チップ上に集積する光電子集積回路(OEIC)などとは異なり、異種デバイス融合による単一素子への集積化であり、シンプルかつ高性能デバイスとして情報通信ネットワーク発展に大いに貢献できると考えている。
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