電子・無線・光領域をシームレスに接続する事が可能な素子として、THz-光信号直接変換技術及び3電気端子を有する光増幅器・光源などの研究を行っている。昨年度は、特に次世代システムにおいて利用可能な、3電気端子を有する長波長帯トランジスタレーザ(TL)の実現に向け、理論解析・素子作製を行った。理論解析においてはLDの動作速度制限の要因であるキャリア輸送に伴う利得低下の影響がTLにおいて低減可能であると示し、その優位性を示した。適切な設計を行うことでLDでは実現困難な100Gb/sを越える変調速度を実現する事が可能であることを示し、キャリア引き抜きによる消費電力増加と変調帯域の評価を行うことで他の変調方式と比べて低い消費電力で40GHz程度の変調速度を実現できると述べた。 一方、素子作製に向けては、昨年度までに達成してきたAlGaInAs/InP埋め込みヘテロ構造形成法・数値計算による設計を元に、pnp型及びnpn型のTL作製を行った。ストライプ幅1.8μm、共振器長500μmのp/n/p型のTLにおいてしきい値エミッタ電流密度J_<Eth>=1.9kA/cm^2、注入効率47%などを実現し、室温連続発振動作及びコレクタ電圧による光出力制御を得た。次に、npn型TLの室温パルス発振を達成し、しきい値ベース電流18mA、しきい値エミッタ電流150mA、しきい値における電流利得7.3を観測し、変調帯域増大に不可欠な電流増幅とレーザ発振を長波長帯TLとして初めて実現した。本素子は、別個の素子を同一チップ上に集積する光電子集積回路(OEIC)などとは異なり、異種デバイス融合による単一素子への集積化であり、シンプルかつ高性能デバイスとして情報通信ネットワーク発展に大いに貢献できると考えている。
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