本研究の目的は、(i)浸透圧応答性キナーゼであるASK3がどのようにして細胞外の浸透圧変化を感知しているかを明らかにするととともに、(ii)ASK3の下流でどのようなシグナルが流れ、どのような遺伝子の発現が変化することによって、細胞外の浸透圧変化に生理的に適応しているかを明らかにすることである。 本年度は、特に(i)の項目に関して重点的に研究を行った。本研究においては、高浸透圧応答がASK1とASK3とで異なるという点に着目し、ASK3の特に高浸透圧応答機構の解明を目指した。高浸透圧環境下においてASK1は活性化されるのに対し、ASK3は不活性化される。このASK3の不活性化にはASK3のN末部位が必要であり、ASK1のN末部位ではそのような機能は担えないということをこれまでの研究により明らかとしている。そのため、ASK3のN末部位特異的に結合する分子をLC-MS/MS法によって同定することを試みた。その結果、計5分子のASK3特異的な新規結合分子を同定することに成功した。 次に、それぞれの分子をRNAi法によって発現抑制した細胞におけるASK3の高浸透圧応答を確認したところ、5分子中ある1分子の発現抑制によってASK3の高浸透圧刺激依存的な不活性化が抑制されるということを明らかとした。今後は、その新規結合分子をASK3の上流因子であると捉え、浸透圧受容機構の解明に迫りたい。
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