研究概要 |
金属ガラスの熱容量を1.8Kから870Kまでの広い範囲にわたって精密に測定をすることで,金属ガラスのもつガラスとしての性質と金属としての性質の両方に対し、新たな知見を得ることができた。また、1.8Kから300Kまでの磁化率測定を行い、金属としての性質の理解を深めた。 ガラスとしての性質で分かった点は、金属ガラスも構造緩和する点と、結晶と比較することで局所構造を持つであろうという点が分かった。さらにこの局所構造に関する情報がガラスの安定性にも関連するのではないかという点も明らかになった。 金属としての性質で分かった点は、磁化率との比較から金属ガラスも伝導電子の存在があることを示した点である。ガラス転移温度以下でのアニールや、結晶化温度より高温で結晶化させることで伝導電子のフェルミ面での状態の密度が変わることを定量的に求めた。これによって構造緩和と伝導電子の関連性があるかのせいを見出した。 また、三元合金であるNi-Nb-Zr系の金属ガラスの熱容量の組成依存性を定量的に求めた。この結果、この物質には超伝導による相転移が観測され、組成変化に伴い転移温度は系統的に変化することがわかった。熱容量の値も組成変化に伴って系統的に変化したが、結晶と仮定した熱容量との差をとると、ガラスの安定性の一つの目安であるガラス転移温度の組成依存性との関連が見つかり、局所構造とガラスの安定性を関連付ける手がかりを発見した。今後、X線吸収微細構造解析の結果と照らし合わせてガラスの構造解明を進めていく予定である。
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