研究概要 |
本研究では中性子束縛限界近傍に属する中性子過剰核Ne,Mg,Siのクーロン分解反応、及び核力分解反応の測定を行い、新中性子ハロー核の発見と、殻構造の微視的理解を目指した。中性子過剰領域では、安定線上に存在する核とは異なる性質を示す核がいくつも発見されており、近年この領域は盛んに研究されている。しかし、従来のシェルモデルによる記述が困難であり、理論的な理解が不十分な状況にある。そこで、中性子束縛限界にのみ存在する特異な核、中性子ハロー核を探索し、その微視的構造を明らかにすることで、シェル構造の発達といった中性子過剰領域特有の現象を系統的に理解すること試みた。 実験で得られた^<29>Ne,^<33,35,37>Mg,^<39,41>Siのクーロン分解断面積のうち、特に^<37>Mgでは断面積の増大が見られ、この核がハロー核であることを示唆する結果を得た。^<41>Siのクーロン分解断面積は37Mgの断面積に及ばないものの、通常の核の断面積より大きく、有意なハロー成分を持つことが示唆された。また、核力分解断面積、フラグメントの運動量分布、ガンマ線の結果と組み合わせることで、^<29>Ne,^<37>Mg,^<41>Siの基底状態の中性子分離エネルギーとスピン・パリティを見積もることに成功した。クーロン分解反応と核力分解反応を組み合わせ、核構造についての知見を得る今回の手法は、本研究によって初めて開発された新しい核分光の手法である。現在、これらの結果をもとに、中性子数20,28の中性子束縛限界近傍における核構造を系統的に議論しており、論文を執筆中である。
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