MGGGGGDYKDDDDKとMGGGGCDYKDDDDKのペプチドのDNAテンプレートを調製し、翻訳合成の条件検討を行った。終止コドンにアンバーコドン(UAG)を用いたので、翻訳修了後EDTAを加えてリボソームを解離させてペプチドを遊離後、MALDI-TOF-MSにより質量分析した。しかしながら、目的のペプチドの分子量を確認することはできなかった。そこで、正常に翻訳を終了させるために、再構成無細胞翻訳系中にRf1を添加して翻訳したところ、目的のペプチドが得られ、DNAテンプレートは問題なく調製されていることが確認できた。EDTAの添加により、質量分析が困難になったと考えられたため、翻訳合成してEDTA添加後にFlag精製をしてから質量分析を行ったが、改善は見られなかった。現在は原因の特定と質量分析するための条件検討を行い、実験系の構築を目指している。次に、ペプチドのN末端へのクロロアセチルフェニルアラニンの導入とそれによるペプチドの環状化およびβ-メルカブトエタノールとの反応条件の検討を行う予定である。順調に行けば、種々の長さのポリグリシンのペプチドを調製し、ペプチドがリボソールトンネル内で環状化できる最大の長さを見積もる。また、クロロアセチル基とシステイン残基の反応によるチオエーテル結合形成を利用した、特殊環状ペプチドライブラリから、上皮性細胞接着分子(EpCAM)に結合するペプチドのセレクションを行った。EpCAMは癌細胞の増殖や分化、転移に深く関与していると言われており、EpCAMの阻害が癌治療につながると期待される。現在、得られたペプチドを用いて癌細胞の標識及び治療への応用を試みている。
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