研究課題/領域番号 |
10J09763
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶山 智司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | バイオミネラリゼーション / 無機/有機複合体 / 薄膜 / 結晶成長制御 / 有機高分子 |
研究概要 |
生体内で形成されるバイオミネラルに倣い、温和な条件下で新規無機/有機複合体を作製することを目的とする。生体内と同様に有機高分子は無機イオン、無機結晶と相互作用し、その結晶成長を制御することを見出している。同時に、有機高分子が無機結晶と複合化することで、それぞれ単独では成し得ない機能を発現することがある。この点に着目して、温和な条件下で有機高分子を用いて、無機結晶の結晶成長制御を行うと同時に複合化させて、新しい有機無機複合体材料の作製を試みた。本年度では、新しい結晶成長手法の開発とそれを用いた様々な無機結晶/有機高分子複合体薄膜の作製を行った。 これまでの水酸化物の結晶成長にはアンモニア蒸気を用いた手法を用いてきた。今年度は、さらなる無機結晶の構造制御や他の無機化合物への応用を指向して、新しい有機高分子/無機化合物複合体の作製手法を開発した。 高濃度水溶性高分子存在下でカルシウム塩と炭酸塩を混ぜると一時的に結晶化が抑制される。この溶液に有機高分子マトリクスを浸漬することで、炭酸カルシウム/有機高分子複合体薄膜を作製した。また、このような現象は炭酸カルシウムに限らず用いる高分子や有機物を選択することで、他の無機化合物へと応用が可能であると考えられる。そこで、この結晶成長手法を様々な無機化合物/有機高分子複合体薄膜の作製を行っており、水酸化コバルトなどの遷移金属水酸化物への展開を試みている。さらにこうした手法を用いることで汎用的に無機結晶/有機高分子複合体の作製や構造制御が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水酸化コバルトの結晶成長制御やその構造を利用した機能化などは望んでいた以上の結果を得ることは出来なかった。しかしそれらの知見を生かして様々な無機化合物の結晶成長制御を行い、新たな無機/有機複合体の作製につながり、新しいアプローチで研究を遂行させることができた。よって、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新しい機能性無機/有機複合体の作製を行い、その結晶構造解析、形状観察および機能評価を行う。これまでの知見を生かして、現行の温和な条件下で行う結晶成長および有機高分子と無機化合物の複合化手法を水酸化コバルトを含めた遷移金属化合物へと応用して、今後の研究を行うことで新しい機能性複合材料の創製を試みる予定である。
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