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2010 年度 実績報告書

統合された社会とその敵:社会性昆虫アミメアリにおけるコロニー内拮抗関係とその解消

研究課題

研究課題/領域番号 10J09877
研究機関国立大学法人琉球大学

研究代表者

土畑 重人  国立大学法人琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)

キーワード進化生態学 / 社会性昆虫 / 協力の進化 / 集団遺伝学
研究概要

生物界に見られる各階層に共通する特性として,一つ下の階層にある要素が集合し,それらが集合の中で分業することで全体としての統合性を実現しているということが挙げられる.進化生物学においては,これらの統合性は「社会性」ないし「協力」と呼ばれ,いかにして協力が進化してきたかは当該分野におけるもっとも根源的な問いのひとつである.協力の進化にあたって問題となるのは,一つ下の階層に属する要素間に存在する拮抗的関係(コンフリクト)がいかにして解決されるのか,ということである.この問題に取り組むために,代表的な社会性昆虫であるアミメアリを材料とした.アミメアリは,コロニー内の全個体が単為生殖によって繁殖しかつ労働を行うという特異な生活史を持っているが,一部のコロニーに産卵に専従し労働を行わないという「裏切り」表現型を持った個体が混在していることが知られてきた.今回新たに行った集団遺伝学的解析によって,この「裏切り系統」は1回の突然変異によって生じ,調査集団内で実に200~9200年にわたって存続しているという推定結果が得られた。これは他生物における裏切り系統の持つ一般的性質から予測されるよりも長い存続年数である.複数の手法による解析は一致して,(i)裏切り系統は他コロニーへの侵入を行いつつも(ii)侵入の空間スケールは限られた範囲である,ということを示唆していた,これらの特性が「裏切り系統」の長期存続に及ぼす影響を他生物との比較の観点から考察した.さらに,別の集団で得られた複数コロニー由来の「裏切り」個体および通常個体の系統関係を調べたところ,香川集団でも裏切り個体と通常個体とは遺伝的に分化しており,されに両集団の裏切り系統が遺伝的に異なっていることが明らかになった.これは,裏切り系統が別の場所で独立に起源したという仮説を強く支持するものである.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Social cancer and the biology of the clonal ant Pristomyrmex punctatus (Hymenoptera : Formicidae)2011

    • 著者名/発表者名
      辻和希, 土畑重人
    • 雑誌名

      Myrmecological News

      巻: 15 ページ: 91-99

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Parasitism of adult Poecilus versicolor (Coleoptera : Carabidae) by hymenopteran larvae.2011

    • 著者名/発表者名
      笹川幸治, 池田紘士, 須藤充昭, 土畑重人, 伊藤元己
    • 雑誌名

      The Canadian Entomologist

      巻: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Increasing Individual Density Reduces Extra-Variance in Swarm Intelligence2010

    • 著者名/発表者名
      藤澤隆介, 土畑重人, 松野文俊
    • 雑誌名

      Swarm Intelligence (ANTS 2010): Lecture Notes in Computer Science

      巻: 6234 ページ: 570-571

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Persistence of the single lineage of transmissible "social cancer" in an asexual ant2010

    • 著者名/発表者名
      土畑重人, 佐々木智基, 森英章, 長谷川英祐, 嶋田正和, 辻和希
    • 雑誌名

      Molecular Ecology

      巻: 20 ページ: 441-455

    • 査読あり
  • [学会発表] 歴史は繰り返す?:アミメアリにおける裏切り表現型の系統解析2011

    • 著者名/発表者名
      土畑重人, 森英章, 長谷川英祐, 佐々木智基, 嶋田正和, 辻和希
    • 学会等名
      第58回日本生態学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター,札幌市
    • 年月日
      2011-03-11
  • [学会発表] 幼虫とワーカーの拮抗的共進化:カースト運命をめぐるコンフリクトの数理モデル2010

    • 著者名/発表者名
      土畑重人
    • 学会等名
      第29回日本動物行動学会大会
    • 発表場所
      男女共同参画センター,那覇市
    • 年月日
      2010-11-19
  • [学会発表] Clone wars : persistence of the single lineage of cheaters in the parthenogenetic ant Pristomyrmex punctatus2010

    • 著者名/発表者名
      土畑重人, 佐々木智基, 森英章, 長谷川英祐, 嶋田正和, 辻和希
    • 学会等名
      XVI World Congress of the IUSSI
    • 発表場所
      Copenhagen, Denmark
    • 年月日
      2010-08-10
  • [学会発表] アミメアリにおける裏切り系統の長期存続:他コロニーへの侵入戦略2010

    • 著者名/発表者名
      土畑重人
    • 学会等名
      第12回日本進化学会大会
    • 発表場所
      東京工業大学,東京都目黒区
    • 年月日
      2010-08-03

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公開日: 2012-07-19  

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