平成22年度は研究実施計画に基づき、博士論文の執筆に専念した。「律令軍事構造の研究」と題して鋭意取り組んだ結果、平成23年3月に東京大学大学院人文社会系研究科に提出することができた。本論文は日本古代国家の軍事構造について、律令制研究を基盤として主に制度面からその特質に迫ったものである。軍事構造を軍事制度・軍事財源・交通検察・治安維持の観点から検討し、律令国家の軍事的性質を明らかにした。また執筆にあたっては、木簡学会・唐代史研究会・史学会大会に参加し、多くの知見を得ることができたるくわえて敦煌文献を数多ぐ所有する杏雨書屋(武田科学振興財団)の特別展示会を観覧することで、貴重な軍事関係文書を実見する機会を得た。 このほか、北宋天聖令の公表後、唐令復原研究の新段階を示すものとして出版が待たれる『新唐令拾遺』の執筆者の1人として、研究会で昨年度に引き続き研究報告を行った。担当分の原稿については、平成23年度中に完成させる予定である。また平成22年度より開始された工学院大学における共同研究「古代東アジアにおける学術と支配制度の研究」の研究会において、「律の受容と明法道の成立-律附釈の性格をめぐって-」と題する報告を行った。さらに平成21年の日本古代史学会を通観するものとして、『史学雑誌』119編5号「2009年の歴史学会-回顧と展望-」(2010年5月)において、日本古代の大化前代の項目を執筆した。
|