研究課題/領域番号 |
10J09891
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宇野 瑞木 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 孝 / 二十四孝 / 孝子説話 / 孝子伝 / 表象 / 図像学 / 東アジア / 漢字文化圏 |
研究概要 |
本年度は、本研究の中心課題である二十四孝説話について、研究実施計画に基づき、前近代までの中国と日本におけるテクスト及び図像資料の収集・整理を行い、それを博士論文としてまとめる作業を行った。既に、平成25年3月28日の口頭試問会において、主査および副査4名の計五名による公開審査が行われ、合格と認められている。現在、正式に博士号が授与されるのを待っている状況である。尚、博士論文の概要は、以下の通りである。博士論文では、その題目「孝の表象とその機能二十四孝説話を基点として」の通り、二十四孝説話の分析を通じて、前近代の東アジア社会(とりわけ中・日・韓)における〈孝〉表象の機能の共通点や偏差を明らかにした。従来、二十四孝に関する研究は、説話文学、美術史、考古学、思想史といった各分野で個別的部分的に進められてきたが、本研究では、それらを学際的に結び付けて全体像を把握するために、孝子説話をめぐる諸現象を、図像、文字テクスト、語り、儀礼といった具体化されるもの、さらにそれを超えながら結びつける力を「表象」として捉え直すことによって、説話表象の総体を把握することを試みた。すなわち、本研究の特徴は、二十四孝の〈説話表象文化論〉とでも言うべき方法にあるだろう。 博士論文の執筆以外には、国内での発表を一回、国際的な場での研究発表を2回行った。後者に関しては、8月7日に沖縄で開催された中国復旦大学文史研究院と東京大学東洋文化研究所を中心とした若手研究者交流セミナーにて、「Functions of Representations of Filial Piety(孝):During The Early Modern Period in Japan」というタイトルで英語による口頭発表を行い、3月15日に上海で開催された「Todai-Fudan Doctoral Students Forum : New Trends of Humanistic Studies」では、復旦大学文史研究院の若手研究者と東洋文化研究所の若手研究者による人文学の将来とグローバルヒストリー構築のための意見交換がなされ、「My Dissertation and future studies」というタイトルで英語による口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、博士論文の執筆・提出・審査が終えられたため。
|
今後の研究の推進方策 |
博士論文における前近代までの日本と中国の図像およびテクスト資料のデータに基づいて、さらにベトナムや台湾、韓国などの孝子説話の資料を収集・調査・整理する。ベトナム漢文や朝鮮漢文における孝子説話の解読作業のために、その専門の研究者との交流を行い、研究を進めることを予定している。 また、このように対象とする地域を東アジアの広い地域に拡大していく一方で、同時によりローカルな現象を捉えていくことも行っていく。つまり、マクロな視点とミクロな視点を交差させていくことで、全体を見極める作業を慎重に行うことを目指す。ローカルな現象への着目の方法としては、たとえば、島根県江津市の洞智山光善寺(近日調査予定)や千葉県木更津市の讃誠寺、あるいは静岡県浅間神社など全国各地の寺社に残る二十四孝の彫刻の調査する他、京都祇園祭りをはじめとした祭りの曳き山にみられる郭巨由などの調査も行う。さらに、岡山県臨済宗妙心寺派曹源寺所蔵の二十四孝絵巻の調査および論文における紹介(翻刻・解題)をすることを考えている。同じ手法を、中国や韓国やベトナムといった地域においても行うことを目指す。
|