研究概要 |
本研究では、逆行性小胞輸送におけるSNARE分子GS28の線虫変異体(GS28変異体)において、幹細胞の非対称分裂に異常が見られることを見出している。この非対称分裂の異常の分子機構を探るために、線虫変異体を用いたエンハンサースクリーニングを行った。従来のRNAiの手法ではノックダウン効果が完全ではないので、線虫変異体同士の交配を行うことで、エンハンサーの影響を見やすくした。当研究室には東京女子医大の三谷研究室との共同研究により、小胞輸送関連分子の線虫変異体ライブラリーがあり、網羅的な解析が可能である。 その結果、Golgi嚢間の小胞輸送における小胞のtetheringに必要であるCOG(Conserved Oligmeric Golgi)分子とGS28との間に遺伝学的相互作用があることを見出した。具体的には、1)GS28変異体にCOG変異を導入する事で著しく産卵数が減少し、胚致死が上昇すること。2)COG変異体では腸管におけるGoIgi局在タンパクの発現が減少することを見出した。 今後はCOG変異体のseam cellにおける非対称分裂に異常があるかどうかを検討する。もし, COG変異体で非対称分裂に異常があったならば、GS28変異体との遺伝学的相互作用を検証していきたい。COG変異体ではゴルジ嚢間の小胞輸送に異常が生じていることが予想され、幹細胞非対称分裂にゴルジ嚢間の小胞輸送が重要であることを示唆することができる。さらに、GS28やCOGの結合タンパクをyeast-two-hybrid法などにより同定していきたい。
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