研究概要 |
植物の根から分泌されるストリゴラクトン(SL)は、土壌根圏では根寄生雑草およびアーバスキュラー菌根菌の宿主認識シグナルとして、植物体内では地上部の枝分かれ抑制ホルモンとして作用する。本年度は、以下の項目を中心に調べた。 「根のSL生産・分泌に影響を与えるサイトカイニン(CK)とリン(P)の相互作用」 昨年度までにP欠乏で前培養したイネに、PやCKを与えるとSL生産・分泌が抑制されることを明らかにしている。今年度は、SL生産に影響を与えるPとCKの相互作用を詳細に検討した。SL生産に70%程度の阻害作用を示す濃度のPとCKを同時に与えたところ、相加的あるいは相乗的阻害作用は認められなかった。この結果から、PとCKはSL生産・分泌調節に関わる同じ(あるいは極めて近い)部位を制御していることが示唆された。次に、PとCKはどちらが上流で作用するのかを検討するために、CKがP代謝に与える影響およびPがCK生合成に与える影響を検討した。CKはP代謝には影響を与えず、Pはisopentenyl adenosine含量を根で低下させ、地上部で増加させることが明らかになった。 「植物ホルモンが根のSL生産・分泌に与える影響」 植物ホルモンを水耕培地に処理したときのイネのSLの質的量的変化を調べた。8種類の植物ホルモンのうち、CK,アブシジン酸(ABA),メチルジャスモン酸(MJA),エチレン前駆体(ACC)は根のSL含量および分泌量を低下させた。一方、オーキシン(IAA,NAA),プラシノステロイド(BL,CS),サリチル酸(SA)は何の影響も与えなかった。SL生産に対して阻害活性を示した植物ホルモンの影響を、根分け法を使い詳細に調べたところ、ABA,GA,MJAはPと同様にシステミックに、一方、CKとACCは局所的にSL含量を低下させた。
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