本年度は室町後期公家の鷹狩文化を探ることを中心課題に据えた。そのために主には(1)室町後期までの鷹書の調査、(2)尊経閣文庫蔵「似則似鳩抄」の研究の2点を行った。 (1)現在『放鷹』などで公表されている、室町期までの鷹書の確認し、鷹書全体の整理作業を行った。宮内庁書陵部、内閣文庫、尊経閣文庫を中心に調査に入り、同時に各文庫のマイクロフィルムを収集して100点余りの鷹書の伝本を調査し、目録をデータベースとして作成した。(2)「似則似鳩抄」は「伊勢物語」の注釈や歌学秘伝書の影響など、三条西実隆周辺の文化圏の色合いが濃い鷹書である。なおかつ基春は蹴鞠や入木道の書などの芸道の故実書の書写も積極的に行っていたが、「似則似鳩抄」にはそれらと共通した記載も見られる。同書では鷹の道を歌道、蹴鞠、郢曲などの芸道の中に位置づけようとしている。これは鷹のみではなく中世後期の公家の芸道観を解き明かすための重要な手がかりであろう。芸能史研究会にて発表し、その要旨は同研究会「芸能史研究」に投稿した。近く論文化し、同誌に投稿予定である。今年度の基礎調査により、より深く検討する素地が揃った。来年度はより迅速な研究成果が望めるものであると確信している。
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