研究課題/領域番号 |
10J10152
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大坪 舞 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 鷹書 / 芸道 / 近衛前久 / 庭訓往来 / 中世後期 / 武家故実 / 持明院基春 / 鷹百首 |
研究概要 |
23年度は関東武家の鷹をテーマに研究する計画であった。とはいえ、22年度の成果により鷹書の作成が中世後期、特に応仁の乱以後の公家の地方下向の問題と深く関わっていることが判明し、この点を解消するため、ひとまず室町後期に照準を定め、鷹のみではなく同時代の文学・芸道・故実に対する視点をより強く持った上で研究に取り組んだ。 (1)武家故実 現在の鷹書分類は鷹に関するものであれば歌書形態から故実書・医書までも含むものである。本研究では鷹書の性質をより具体化するため、鷹書という枠の中の位相差に意識的に取り組んでいる。22年度より取り扱った持明院基春周辺の鷹書は武家故実の色彩の強いものである。武家故実書の中に鷹に関する記載の含まれるものも多いことから、鷹書に加え武家故実書の調査も行った。また近衛前久の『龍山公鷹百首』を中心に、これらの書の言説が、当時投入された場として庭訓往来の講釈の場を取り上げ、説話レベルでの融合を明らかにした。成果の一部は発表後、論文化。 (2)和歌・連歌との連関 和歌連歌の学に鷹の知が流入していたことに着目し、鷹書の中でも特に連関の深い鷹百首・鷹連歌の調査を踏まえて検討、一部は論文化した。この点については24年度も引き続き行う予定である。 (1)、(2)の問題意識のもと、尊経閣文庫・宮内庁書陵部・内閣文庫・国文学研究資料館・永青文庫・蓬左文庫・天理大学図書館・岩瀬文庫・静嘉堂文庫・島原松平文庫の調査を行った。 また22年度行い発表が遅れていた持明院基春の鷹書について、発表・論文化した。 鷹書における知を文学研究の中に位置づけ、同時に中世後期の芸道について問題提起も行い、当初の計画より意義のある成果となったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にあった鎌倉期の武家に関する鷹については解明しえていないが、室町後期に焦点を絞り、文学・芸道という観点をより強く持つことで本来の予定より学界に寄与しえる成果が出たと考えているため。また、発表・論文については、質・量ともに予定と遜色ない。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような理由により、今後も当初の予定を多少変更し、遂行したいと考えている。24年度は業平像をテーマとしていたが、この根源にあるのは中世の注釈的言説の中に鷹がどのように位置づけられていたかという間であった。これを検討する上では、和歌・連歌の学のもと、鷹書の知が生成されていった過程を証明する必要がある。よって鷹百首類の調査を精力的に行う予定である。
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