研究課題/領域番号 |
10J10340
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
西上 幸範 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アメーバ運動 / 細胞運動 / アクチン / ミオシン / ブレブ / 人工細胞 / モデル系 / 細胞骨格 |
研究概要 |
ブレブ依存的アメーバ運動は細胞が生体内や3次元マトリクス中を移動する際に多く用いられる運動様式である。この運動は、細胞表層部分でのアクトミオシンの収縮により生じた静水圧を駆動力としていると考えられている。この運動の際に細胞質は活発なゾルーゲル変換を行うが、その機構については依然不明な部分が多い。現在、このブレブ依存的アメーバ運動の機構についての精力的な研究が行われているが、この運動が観察されるのは主に生体内であることや、運動には細胞全体が関与し複雑であるといったことから、解析は非常に困難である。私は、典型的なブレブ依存的アメーバ運動を行うAmoeba proteus を用いて試験管内でこの運動を再構築することに成功した。今回、この再構築系の流動特性を調べることで、新しい細胞質ゾル-ゲル変換機構が働いていることが示唆された。具体的には、シリコンシートを用いてサブミリオーダーのチャンバーを作製し、その中で運動を誘導した。その際の流動のパターンを蛍光ビーズとリアルタイムコンフォーカルを用いて観察した。その結果、一様なアクトミオシン溶液であるにも関わらず、加える力の大きさが変わればゾルとゲルが出来、その分布はゾルがゲルに囲まれた状態であるということが分かった。このことは、このアクトミオシン溶液がshear-thinning性を持っていると考えると説明が付く。観察されたゾル-ゲル分布は細胞でのゾル-ゲル分布と非常に類似している。実際、生細胞を用いて同様の実験を行うとその流動プロファイルは再構築系と相似形となった。以上の事から細胞は生体内のアクトミオシンのshear-thinning特性を用いてゾル-ゲル変換している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モデル系および生細胞の流動解析から、新しいゾル・ゲル変換機構の存在が示唆された。この機構はこれまで提唱されてきた機構とは異なり、新しい視点であり今後の発展が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
モデル系の流動解析で観察された現象が生体内でも用いられているかについて詳細に調べる予定である。手法としてはアクティブマイクロレオロジー法を応用することが考えられるが、所属研究室ではこの測定機器および測定法に関する手続き的知識が存在しないので、専門の研究室に出向してこれらについて学ぶ予定である。
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