本研究は二光子吸収効率の高い色素を、無機ナノシートのホストマトリックス中に閉じ込めることで、色素の二光子吸収効率を高めた固体状態の材料を得ることを目的とした。通常無機-有機ハイブリッドは光散乱体であり、光学材料としての利用に適さなかった。そこで本研究では、無機-有機分子ハイブリッドの光学材料としての利用価値を高めるため光散乱の小さいハイブリッド膜の作製法を確立し、その後、無機ナノシートとの包接化により、有機物の非線形光学特性が向上する要因を明らかにすることを目的としていた。前年度までの研究で、当初の目的を達成することができ、波長660nmで二光子吸収断面積が10000GMを超える固体材料、つまりDVDの波長のレーザーで極めて二光子吸収効率が高い固体材料が得られた。 本年度は、得られた知見に基づき、二光子吸収以外の他の全ての非線形光学効果に優れた材料を無機-有機ハイブリッド材料により創出することに取り組んだ。その結果、光第二、および、第三高調波発生に優れた材料が創出でき、前年度までの成果を、無機-有機ハイブリッド材料により顕著な非線形光学材料を得るための普遍的な指針に拡張することができた。 また、無機ホストになり得る化合物として新たにポリ酸に着目し、非線形光学材料を目指したポリ酸-有機ハイブリッド材料の創出にも着手した。ホストのポリ酸としてはコンベンショナルなタングステンクラスター、モリブデンクラスター、バナジウムクラスターを用い、ゲストとしてルテニウム(II)フェナントロリン錯体や、スチルバゾリウム系色素を用いて、ハイブリッドを作製した。非線形光学材料としてだけでなく、光触媒としての可能性も材料が得られ始めてきた。
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