本年度は20世紀モザンビーク・南アフリカ間関係の通時的把握を目指し、巨視的な分析を補強するため、研究代表者のこれまでの研究対象時期である19世紀末から1920年代までの時期以降、1930年代から近年までの20世紀に広げ、より長期的な視野の中で研究課題を位置づける取り組みを行った。この取り組みは、ポスト・アパルトヘイトの現代南部アフリカ地域が克服すべき、植民地支配を起源とする問題の考察と直結している。これについては社会経済史学会第79回全国大会パネル・ディスカッション「近現代南アフリカ経済史研究の諸問題-土地・労働・企業の視点から-」個人報告題目「南アフリカ金鉱業における移民労働者の社会経済的役割-モザンビークからの移民労働者を中心に-」および大阪大学人間科学研究科グローバルCOEプログラム「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」「コンフリクトの人文学」セミナーにおいて報告を行い、討論を行った。また、現代南部アフリカ地域という広域地域の問題として論じた中間的成果は「南アフリカにおける移民政策と国家・国民形成」牧野久美子・佐藤千鶴子編『ポスト移行期南アフリカの社会変容』(調査研究報告書、アジア経済研究所、2011年3月、121-142頁。)として纏めた。さらに現地調査を踏まえ、モザンビーク・南アフリカ間関係の変遷と調査対象地域であるモザンビーク・イニャンバネ州農村部の社会変容の連関についての研究成果の一部は、論文「モザンビーク南部の移民送り出しとその社会的影響の地域的多様性-植民地期のアルコール市場をめぐる競合と排除一」『アフリカ研究』第76号、1-15頁。)として公表した。
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