研究課題
植物の二成分制御系(TCS)の普遍性と生理機能を理解する上で、高等植物のみを扱うよりも、原始的な植物を含め植物の進化と共にとらえることが必要であると考えられる。そこで、私は全ゲノムが決定され、高効率の遺伝子ターゲッティングが可能なコケ植物セン類のヒメツリガネゴケを研究対象に加えることにした。まず、ヒメツリガネゴケのゲノムデータベースよりTCS関連遺伝子を全てピックアップした。その結果、サイトカイニン(CK)情報伝達系に関わるHKs、HPts、RRsに高い類似性を示すものが存在することが分かった。これらのHKのうちPpHK4bを用いて、実際にCK受容能を示すかどうかを、私の研究室が以前確立した大腸菌のシステムで確認した。その結果、PpHK4bはCK受容能があることが分かった。CKの他に、エチレン受容にもHKが関与しているが(ETR1など)、その類似遺伝子も存在していることが分かった。このHKについても、CK受容体を検証したのと同様の系でエチレン受容能を調べた。その結果、このHKにはエチレン受容能があることが分かった。このことから、ヒメツリガネゴケにもCKとエチレンの受容・応答にTCSが関与していることが示唆されたが、今後はこれらの遺伝子の欠損変異体を作成し、コケの生理現象に及ぼす影響を観察する予定である。シロイヌナズナには、CK受容体HK遺伝子とエチレン受容体HK遺伝子の他に、AHK1/AtHK1、AHK5/CK2、CK1の3つのHKグループが存在するが、ヒメツリガネゴケにはCK1以外のHK類似遺伝子が存在することが分かった。また、ヒメツリガネゴケには高等植物には無い独自のHKが6種類存在していることが分かった。以上の結果は、Biosci Biotechnol Biochem.2010;74(12)に報告した。
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Plant & Cell Physiology
巻: 51 ページ: 1800-1814
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 74 ページ: 2542-2545