研究概要 |
千島沈み込み帯は太平洋プレートが千島列島の下に沈み込むため巨大地震が多く発生する場所である.千島沖巨大地震の発生パターンを解明するため,過去の巨大地震について津波波形解析を行い,詳細な破壊域を解明することを目的とし研究をおこなった. 1958年択捉島沖地震について,この地震はプレート境界部よりやや深い場所で発生したスラブ内地震である.この地震により津波が発生した.本研究ではこの地震の破壊域を調べるため,太平洋沿岸やオホーツク海沿岸の検潮所で観測された津波波形を用いて津波波形インバージョンをおこない,すべり量分布を求めた.その結果すべり量が1m以上の破壊域は1日以内の余震分布とほぼ一致する.地震モーメントは1.7*10**21Nm(Mw8.1)と推定された.この結果は国際学会(IUGG),国内学会(地球惑星科学連合大会)で発表をおこなった. 1969年北海道東方沖地震について,この地震はプレート境界で発生し,津波をともなった.津波波形インバージョンをおこないすべり量分布を求め,1963年千島沖地震,1973年根室沖地震との破壊域の関連性について調べた.その結果すべり量が1m以上の破壊域は200km×100kmと求められ,震源付近ですべり量が大きいことがわかった.地震モーメントは1.0*10**21Nm(Mw7.9)と推定された.この結果は国内学会(日本地震学会)で発表をおこなった. 1963年千島沖地震は1969年地震の北東側で発生した.また1973年根室沖地震は1969年地震の南西側で発生した.しかし1969年地震は,1963年,1973年地震とは重複はせず空白域も存在しないことがわかった.この結果は国際学会(JKASP,AGU Fall Meeting)で発表をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1958年択捉島沖地震,1969年北海道東方沖地震について津波波形解析をおこない,すべり量分布を求めた.また千島沈み込み帯で発生した他の巨大地震との関連性についても調べ,国際学会や国内学会で発表をおこなった.さらに2012年1月からは北海道十勝沖,根室沖で発生した500年間隔地震について資料収集や数値計算手法について学んでおり,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
千島沖巨大地震について,これまでの研究でおこなってきた1963年千島沖巨大地震1958年択捉島沖地震,1969年北海道東方沖地震のすべり量分布より関連性をまとめ論文投稿をおこなう.また北海道十勝沖,根室沖で発生した500年間隔地震について数値計算をおこなう.そして津波堆積物から求められる津波の高さ,津波浸水域を比較し破壊域を求める.また,この結果を国際学会,国内学会などで発表し論文にまとめる.
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